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リハビリテーションを通した地域での事業所連携 ~多職種で支える自立支援~

リハビリテーションを通した地域での事業所連携 ~多職種で支える自立支援~

介護保険制度はおおむね5年に一回法改正があり、3年に一度介護報酬の改定が実施されています。
社会情勢の変化などに応じて、制度の見直しを行うことが介護保険法制定当初から定められており、最近では平成30年4月に介護保険法が改正されました。

 

その中で、自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現という重点項目が掲げられ、自立支援や重度化防止を目的とした質の高いサービスの提供を促進するよう制度改正が行われています。

 

介護保険制度の目的である自立支援を実現するために、サービスの質を向上することを目的としています。

 

特に、ホームヘルパーを自宅に派遣する訪問介護や日帰りで要介護者が通所するデイサービスなどについては、事業所間でのサービスの質にも差があり、まだまだ自立支援のための取り組みが不足している事業所も多いという指摘もあります。

 

理学療法士や作業療法士といったリハビリテーション専門職の配置義務がなく、リハビリテーションの視点から、自立支援につながるサービス提供はまだ不十分とも言えます。

 

そこで、訪問介護やデイサービスの事業所が外部事業所のリハビリテーション専門職と連携を取り、同行訪問して助言を受け、共同アセスメントを行う場合には生活機能向上連携加算という名目で介護報酬が上乗せされるように制度改正されました。

 

ここでいう外部事業所として、これまでは訪問リハビリテーション事業所や通所リハビリテーション事業所の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に限られていましたが、今回の法改正でリハビリテーションを実施している医療提供施設(原則として許可病床数200床未満のものに限る。)なども対象に加え、地域内でのリハビリテーションを通した事業所間連携を促進していくことをねらいとしていました。

 

しかし、制度改定からまもなく1年という状況ですが、まだまだこの加算の算定件数は少ないのが現状です。
平成30年12月の介護給付費等実態統計のデータをもとに、全国での生活機能向上連携加算の算定件数を見ると、訪問介護ではおよそ900件、デイサービスでも56,000件(通所介護・地域密着型通所介護を合計したもの)とまだまだ少ないというのが現実です。

 

事業所連携が進まない理由としては、まずはこの制度自体の周知が介護事業所やリハビリテーション提供施設にも不十分であることがあげられます。

 

実際にリハビリテーション専門職が自宅に同行訪問する以外に、動画などで情報共有し、共同アセスメントを行うだけでも加算を算定することはできます。
しかし、介護事業所にIT環境やITスキルが伴っていないという側面もあります。

 

また、リハビリテーションを行う人材の不足の問題もあります。
地域でのリハビリテーションを担う人材として、訪問リハビリテーション事業所・通所リハビリテーション以外にも、訪問看護ステーションで勤務する理学療法士・作業療法士等のリハビリテーション専門職もいます。

 

リハビリテーションに重点を置いた訪問看護ステーションも多く、地域のリハビリテーションニーズを支える重要な存在となっています。
しかし、訪問看護ステーションのリハビリテーション専門職との連携は今回設定された生活機能向上連携加算の算定対象とはなっていません。まったくもってこれはおかしなことです。

 

より幅広く、より実際に在宅支援を行っているリハビリテーションに携わる専門職(訪問看護からのリハビリテーションを認め)を活用していくことで、リハビリテーションを通した地域内連携も促進されていくのではないでしょうか。

 

さらに、こういった連携をもとに、リハビリテーション・自立支援の視点を持った介護職も増えていくことや、地域をターゲットにするリハビリテーション専門職の新しい働き方も考えられるのではないでしょうか。

 

地域のリハビリテーション専門職という貴重な社会資源をより幅広く活用し、事業所間連携を促進することが、地域包括ケアシステムの掲げる自立支援や重度化防止への近道になるのではないでしょうか。より多くの人々のために。