ここ数年、高齢者ドライバーが起こす交通事故のニュースを多く聞くようになりました。
平成28年10月には神奈川県内で87歳男性の運転する軽トラックが通学中の小学生の列に突っ込み、
6歳の小学生が亡くなるという悲惨な交通死亡事故もありました。
加齢に伴い、運転時の判断力は低下します。
また、判断ができたとしても身体機能の低下のためにハンドルやブレーキの操作が遅れるため、事故発生のリスクは高くなります。
認知症や軽度認知症など認知機能が低下していても車を運転している場合もあり、
運転免許の更新の際には75歳以上の高齢者には認知機能検査を行うように義務付けられました。
近年、交通事故での死亡件数自体は大幅に減っているにも関わらず、
ここ10年間、75歳以上の運転者による死亡事故の件数はほぼ横ばいで推移し、減少していません。
全体における構成比としては、75歳以上の運転者の事故が全体の13.5%を占めるようになりました(平成28年度統計)。
運転免許証の自主返納制度の周知も行っています。
認知度は高まっている自主返納制度ですが、運転免許証がないと身分証明になるものがないという方もいるようです。
自主返納の際には運転経歴証明書が発行され、金融機関なども含め身分証明書として使用することもできます。
とはいっても、車がないと生活が成り立たないという地域もあります。
自動車という移動手段がなければ、買い物ができない地域もあり、閉じこもり傾向が強くなることもあります。
コミュニティバスや買物難民のための巡回販売など、
それぞれの地域によって異なる課題を解決するための手段を検討していくことが必要です。
さらに、自動車の代替手段となる選択肢をいかに増やしていけるかも重要な問題になります。
そこでいま、注目を集めているのが超小型モビリティやパーソナルモビリティです。
1~2人乗り、コンパクトで安全な次世代の乗り物として、
自動車やバイク、歩行との中間的な移動手段の開発が続けられています。
これに関しては、ただ安全性や機能性を追求するだけでは、男性高齢者の支持を得ることは難しいと感じています。
車は現代の高齢者にとってはひとつのステータスであり、個性の象徴ともいえるものです。
外観を含めたデザインなど、自己表現の手段としてのモビリティであることが求められるようになるでしょう。
自動運転の精度向上や交通システムの最適化など、
スマートモビリティ社会の実現に向けての取り組みにも期待が集まっています。
より気軽に、そして安全に移動できることで、
高齢者が自分らしく活躍する場を見つけることができ、
地域の中に居場所を見つけることができるでしょう。