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口腔機能の低下・オーラルフレイルを予防する

口腔機能の低下・オーラルフレイルを予防する

介護予防を考えるうえで転倒予防や栄養改善などに比べると一般的に関心が低いのが口腔機能の維持改善です。

食べる・飲む・話す・呼吸をする。私たちの生活の中でも口の果たす役割は非常に大きく、

口腔機能の低下が要介護リスクとも大きく関連しています。

 

例えば、食事や水分を飲み込む力が落ちてしまうと、

本来口から食道を通って消化される食物や水分が誤って気道に入り込み、

誤嚥性肺炎を起こしてしまうリスクが高まります。

肺炎及び誤嚥性肺炎で亡くなる方の数は年間約13万人を超えています。

いまや肺炎(誤嚥性肺炎を含む)は日本人の死因の第3位となり、特に高齢者の誤嚥性肺炎は増加しています。

 

※厚生労働省の統計上、肺炎の死亡者数は平成29年に大幅に減少していますが、

死因の分類に誤嚥性肺炎が追加されたためで、

肺炎と誤嚥性肺炎を死因とする合計数は悪性新生物・心疾患に続いて第三位となります。

 

一般的に、加齢とともに唾液の分泌量は低下していきます。

唾液が少なくなると、口腔内が乾燥し、感染症・肺炎のリスクも高まります。

 

かむ力が衰えると、硬いものが食べれなくなり、柔らかいものを食べることが多くなります。

食べられない食品が増えることで栄養状態が悪化するリスクも高まります。

噛むことが少ないと、脳への刺激も少なくなり、認知症リスクも高まるといわれています。

 

そもそも食事は生活の中の大きな楽しみであり、楽しみが減っていくことは気力の低下に繋がっていきます。

 

また、口腔機能の低下により、滑舌が衰えると、自分から進んで話す機会を持とうとしなくなり、閉じこもり傾向も強くなり、歩行などの運動機能の低下の要因となります。

 

このように口腔機能の衰えが全身の健康状態にも大きく影響することから、口腔内の状態を維持していくことの重要性が高まっています。

こういった口腔機能の衰えをオーラルフレイルと呼んでいます。

 

オーラルフレイルの兆候は見逃がしやすい傾向があり、普段から意識していくことが必要といわれています。

 

かかりつけ医という言葉は一般的に認知され、健康のことを普段から相談できる医療機関を持つことの重要性は国民全体で認知が広がっています。

それだけではなく、かかりつけ歯科医を持つことで、定期検診をしながら歯を中心とした口腔内のメンテナンスを行うことの重要性が高まっています。

 

平成28年度の診療報酬改定から人員体制や設備、実績など一定の条件を満たした歯科診療所として「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」が新設されました。

 

まだかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の数は歯科診療所のおよそ10%程度と言われており、治療だけでなく、口腔機能の管理や連携を通して地域包括ケアを推進できる歯科診療所が増えていくことが望まれています。