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「 停滞か!維新か! 」

プライマリ・ケアで大きく変わる日本の医療

かかりつけ医、メディカルスタッフ専門職連携で真のチーム医療へ

高齢化社会において、地域医療を担う重要な役割を持っているのが「かかりつけ医」です。

   大病院のイラスト​    聴診器と医者のイラスト(健康診断)​                  

高齢化に伴い、慢性疾患・基礎疾患を持つ患者数が増えています。重要なのは、健康状態を継続的かつ適切に管理し、重症化や合併症を予防すること。加えて、早期発見や専門医療機関との連携など、切れ目のない医療体制を整備することで、住み慣れた地域でいつまで暮らす「地域包括ケア」を実践することができます。そのためには身近な医療機関として市民の健康維持・増進を図る「かかりつけ医」の存在が欠かせません。

身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療をプライマリ・ケアと言います。欧米を中心に海外ではプライマリ・ケアが定着しています。イギリスやフランスなどでは、国民はかかりつけ医(家庭医)への登録が義務付けられ、かかりつけ医を通してから専門病院を受診するシステムが整っています。どんな病気でも包括的かつ柔軟に対応し、全人的に診察を行う総合医が地域医療を支えているのです。

これに対して日本では、地域のクリニック・かかりつけ医でも臓器別専門医の開業が多く、専門分化しております。総合医ではなく、専門医を志向する傾向が高いのが日本の医療です。日本でかかりつけ医の機能を高めるためには、プライマリ・ケアを実践する総合医を増やしていくことが必要です。

実は、プライマリ・ケア拡充を妨げる壁は、日本の医療制度の中にあります。日本の医療の大きな特徴として、フリーアクセス制があり、国民はいつでも、どの医療機関でも、所得に応じた自己負担で受診することができます。医療へのアクセスに利便性が確保されているため、患者は診療方針や接遇に納得ができるまで、いくつもの医療機関を転々と渡り歩きます。このような現象は「ドクター・ショッピング」と呼ばれています。疾患に対する適切な治療が行われないまま、医療費が増大し、結果的に医療財政を圧迫しています。高齢者を中心に「あの先生は○○専門」「この先生は○○専門」と臓器別に複数の医療機関を受診する患者が多く、医療機関は患者を獲得するために専門分化していく傾向が強くなっています。このように、日本の医療制度下では総合医が育ちにくい状況となっているのです。

地域のかかりつけ医に求められるのは、病気ではなく総合的に人を診る医療です。どのような世代でも、どのような疾患でも、包括的に診察を行う総合医が必要とされています。

近年、日本医師会による「日医かかりつけ医機能研修制度」、日本病院会の認定する「病院総合医」、全日本病院協会が行う「総合医育成事業」など、総合医を養成する取り組みも増えています。しかしなかなか進まないのが現状です。

予防や健康づくりの取り組み・認知症への対応・専門機関との連携など、かかりつけ医としての機能が強化された医療機関を診療報酬上評価することによって、総合医を増やす取り組みが必要です。

地域に総合医が増え、専門医・高次医療機関との連携を促進していくことで、かかりつけ医を中心とした切れ目ない医療を実現していくことが必要です。

            医療従事者と患者のイラスト

もし、総合医によるかかりつけ医が日本中に広がり看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのメディカルスタッフが地域に存在したら、屋根を外した病院がそこに存在します。予防から看取りまで切れ目のない支援が地域で完結できます。予防医療、早期退院、在宅で回復期リハビリテーションも夢ではありません。