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排泄の自立が自立支援の第一歩

排泄の自立が自立支援の第一歩

排泄がトイレでできる。

これは要介護高齢者の自立を考えるうえで非常に重要なテーマです。

 

オムツの中に排泄するのではなくトイレで、そして排泄で人の手を借りない。

排泄の自立が維持されているときといないときでは、 要介護高齢者が感じる意識は大きく異なり、 排泄の自立は高齢者の尊厳を守る基礎となります。

 

オムツの中に一度でも排泄をする機会があればその不快感にショックを感じることでしょう。

紙オムツも年々改良されて不快感は軽減されているかもしれませんが、 便は別です。心理的なダメージはやはり大きいものがあります。

そしてそれを誰かに交換してもらうということに、 大きな挫折感や屈辱に近い感情を受けることでしょう。

 

排泄の失敗が自尊心の低下、意欲の低下の原因にもつながり、全身状態を悪化させていきます。

また、オムツに排泄することで、褥瘡などの皮膚トラブルの原因になることもあります。

排泄のトラブルが重度化の悪循環の原因となることは非常に多いのです。

 

高齢者の尊厳を守るために、排泄ケアにおいて介護の果たすべき本来の役割は排泄物の処理ではなく、可能な限り排泄を自立に導くことです。

例え人の手を借りてでも、トイレで排泄です。

 

トイレで排泄するためには水分や食事が摂れ、活動などが出来ていることも重要ですし、その人が排泄するのに下剤に頼らず最適なタイミングを把握することも重要なポイントになります。

 

脊髄損傷などの障害により尿意や便意を感じない方や、認知症などのために尿意や便意を表現できない人も、 超音波のセンサーで尿や便のたまり具合を測定する機器なども開発され、 こういった機器が広がることで、テクノロジーを活用した排泄ケアも普及していくことでしょう。

ただ、忘れがちなのは排泄における姿勢の評価です。

しっかり便座に座って前傾姿勢をとり、踏ん張れる姿勢を保持する力がないと、 便を輩出しにくくなります。

同様に、両足はしっかり床面についていなければ、 足に体重を乗せて踏ん張ることもできません。

 

トイレでの動作をリハビリテーション専門職が評価する時に、 トイレの便座に座る動作や、そこから立ち上がる動作など、 トイレでの移動動作に視点が偏りがちです。

ただ、それ以上にトイレで排泄すること自体をきちんと評価できているかも、大きなポイントであり、 特にトイレで排泄するための姿勢については十分な評価がされていない場合が多くあります。

 

昨年 4 月から特別養護老人ホームなどが受け取る介護報酬に「排せつ支援加算」という項目が追加されました。

排泄行為に介助が必要な施設入所者に対して様々な職種が協働して計画を作成する取り組みを評価するものです。

まだまだこの加算項目を算定している施設数は全体数から見れば少ないのが現状です。

 

排泄の自立は自立支援の第一歩。

その人がトイレで排泄するという行為に対して、介護する側がどれだけ向き合えるか、 そこにこれから目指すべき介護サービスの質が問われています。